投手
旧チームでも登板経験のあった右腕庭野と左腕吉岡の二枚が中心も、近畿での戦いには不安が募る。
エースナンバーは庭野だが、大会後半になって存在感を高めたのは吉岡の方。170センチ台前半と身長があるわけではないものの、縦振り系&小さめのテイクバックから投じる速球は独特の角度があり、タイミングも取りづらいため打者を差し込んでいるケースが多く、最大の長所と言えよう。
ただし腰高で上体投げ気味のフォームゆえ全体にボールが高く浮きがちで、狭いサトスタでは一発の危険がつきまとうのは難点。
一方の庭野も体つきは吉岡に近く、横幅のがっちりとした体型。130キロ台の速球に加え、鋭い腕の振りから投じる縦割れのスライダーを武器としているが、県16強の橿原学院戦では追い込んでからの決め手に欠き6回6四死球を与えた上、力んで叩きつけてしまう形でのワイルドピッチも3つを数えるなど不安定な投球内容。それでも6回1失点と一定のゲームメイクには成功したのだが、3回戦以降は先発の機会を与えられないばかりか、登板自体も殆どないまま大会を終えてしまった。

主戦格2枚の継投で大会を乗り切れればいいのだが、厳しいと判断するなら右サイド嶋田、右本格派の福重、190センチを越える期待の長身右腕ら3番手以降の投手も細かく繋ぎながらの総動員体制も辞さぬ構えだろう。


守備
前述したバッテリーミスの問題を抱えるにせよ、内外野の守備に関しては安定感があり、県優勝した昨秋を上回るのではないか。大勝が続いた1回戦~8強の4試合で計2失策、4強~3決の2試合で計4失策してはいるが、打撃妨害によるエラーが含まれていたりもするので、さほど大きく崩れたというわけではない。
旧チームでショートを守っていた下林がサードに回って堅実な守備を見せると、代わりのショートには同じく下級生時からショートを熟した経験がある江口と1年生杉下を併用。セカンドも田中輝と1年生内山が交互にスタメンを分け合い、田中のスタメン時には内山がファーストへ。一方、内山のセカンドスタメン時は攻撃的布陣を組む場合で、その際のファーストには河西が入ることとなる。
やはり1年時から内野手として出場していた山地がセンターを守り、両翼をレフト(1年)・ライト河村が固める外野陣も際立つものはないが、ソツのないプレーは出来ている。智辯戦では、もう一つ球際の強さ、送球の強さがあれば、失点を幾分減らすことが可能だったように思うが、そこまで求めるのは酷か…



攻撃
県大会6試合で7ホームランは智辯に次ぐ水準。中でも3発を放った1番下林は小柄ながらセンター中心にガツンと振り抜く県内随一の強打者で、対戦各校がもっとも警戒する打者だろう。
出塁率も高い1番を、小技・足技・強硬・長打何でもござれな2番山元(キャッチャー)が進め、3番瀨、4番山地、5番内山、6番河西、7番河村と続く強打線が畳み掛けていく。
投手の打力に関しては庭野>吉岡で、吉岡先発時は8番ショートに江口を入れた方が打力の面での補填は効きやすい。
代打陣も豊富で、右は長野(1年)左は田中勝が切り札。また代走のスペシャリストとして堀内(1年)が控えているのも心強い。



展望
県4強では智辯に大敗したものの、地力・戦力の面で大差があるわけではない。
違うのは西村という兎に角タフで大崩れしない決め手を擁する智辯に対して、天理サイドの2投手は上級生ながらまだまだ経験に乏しく、打たれ始めたときの歯止めが効かない点か。バックを守る選手たちにも同じことが言えて、下級生時から出ている自体は多いものの甲子園出場歴はなく、智辯の選手たちと比べれば、一回り以上打たれ弱い面がありそう。
その点、大敗の翌日、重圧にのしかかられながらも薄氷の勝利を収めた3位決定戦の勝利がチームに齎したものは大きいのかもしれない。ホームアドバンテージを背に、兵庫1位校に胸を借りられる初戦は思い切った戦いが出来るはず。まずはこの試合の勝利に全精力を注ぎ込みたい。